CAD大全集 過防備都市 (中公新書ラクレ)


過防備都市 (中公新書ラクレ)
過防備都市 (中公新書ラクレ)

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それなりにタメにはなるが、新書だと見くびってか議論が浅い

 ロッセリーニ『無防備都市』を意識したケレン味たっぷりの書名は、確かに魅力的。近年のセキュリティ志向の高まりを「平時における路上の軍事化」(p6)と位置づけ、開放性を重視する建築思想との対立や絡み合いを検証しようというモチーフも、理解できないではない。だが残念ながら、本書は研究メモの段階に留まっている。「不安こそが、われわれの存在論的地平を規定しつつある」(p104)などと高らかに謳い上げた割には、理論的に詰めた話がなくて肩透かしだった。
 なるほど、「個人的にはカメラだらけの都市空間を快く思わない」(p42)といった立場表明はしている。でも「個人的には」って言い方に逃げを感じるし、その根拠も「カメラと銃の構造が似ている」(p42)だの、「見えない鎖によって、隠れんぼを奪われた児童たち」(p132)だの、「子どもが寄り道する自由は奪われる」(p136)だの。あるいは荒川修作の「養老天命反転地公園」に言及して、「あれだけ危険な空間だからこそ、身体感覚が研ぎすまされる」(p149)だの、甚だしく戦闘力に欠ける話。
 都市を「見えない戦争による分断に脅え、監視の目がおおう不自由な場所」(p219)と化し、「近代社会の自由な公共空間の衰弱」(p211)を導いた要因についても、著者は本気で追求しようとはしていない。結論はお約束の「問われるべきは社会構造」(p227)。セキュリティは「現状追認の対症療法である。むしろ根本的な解決策を考えるべきではないか」(p227)と、ま、その通りですが…「では明日のこの時間、またこのチャンネルでお会いしましょう」って空耳が聞こえそうでした。
個別の事例は豊富だが…

日本の「安全神話」が崩壊したと言われて久しい。その結果、街中に監視カメラが張り巡らされ、各地域では自警組織が作られる。学校や住宅は要塞化し、あらゆる場所で「テロ対策」の言葉が見うけられるようになった。そんな日本の現状を読み解いた書。
タイトル、序文、締め、そして、ちょっとした言いまわしから著者がそのような状況に疑問を呈していることがうかがえる。「セキュリティを強化することが、新たなる不安を呼び、さらなるセキュリティ強化を求めるきっかけとなる」という考え方自体は私も賛成である。
が、この書では、多くの事例、多くの意見などが取り上げられているのだが、全体的なまとまりにかけている印象。また、先に書いたが、著者の意見がハッキリと表明されているわけでもない。なんとなく、疑問を持っているようだ…という感覚か。
もう少し、全体的なまとまりが欲しかった。
それでは、どうすれば良いの?

タイトルを考えたという編集者はエラい。

内容は、ハイテクを駆使したビルや住宅等のセキュリティシステムや、街角の監視カメラ、学校のソフト・ハードでの児童生徒のガード、地域の自衛的組織など、近年とみに増加した、さまざまな防御の仕組みを新聞・雑誌の引用等で紹介すると共に、そこへの違和感を提起する、というもの。

これでもか、これでもか、という事例は参考になるが、それについての筆者の意見や提案はほとんど無い。
序章末の「悲しい現実である。しかし、本当にそれで良いのだろうか」に始まり、二章末では「日本は自衛する西部劇の世界に突入してしまうのか」、四章末は「だが、現代のセキュリティは不安を増幅させることだけに貢献している」等、説明の後に一言「これって変?」というだけである。
最後の方で、銃社会でもアメリカに比べ殺人の少ないカナダでは鍵を掛けない文化であること、荒川区等で「無防備都市」宣言の動きがあることなど、いくつかの(別の方向の)動きが紹介されているのが、数少ない解決への提案的な部分だが、それとて紹介に過ぎない。

その意味で、タイトルの「過」という言葉に、「過剰」「ちょっと多いんじゃあない?」という意味が含まれているが、本文自体にその程度のニュアンスしか語られていない。つまり、タイトルで過不足なくまとめられている。
これがエラい、という理由。

思うところがないのか、あるいは批判が怖いのか、「小心者の評論家」という感が否めない。

有用なネタ本としてしまっておくことにする。
現代社会の一面を描く

 地下鉄サリン事件や9・11のテロによって、世界情勢だけでなく、都市のあり方も大きく変容した。今では、至る所にセキュリティーシステムが張り巡らされている。また、路傍のベンチもさりげなく「他者」を排除するデザインになっている。
 現代の防犯システムにおいては、皆潜在的な犯罪者であり、歓迎されない「他者」となりうる可能性を秘めている。そこには、「他者」を排除し、「内」に閉じこもっていく現代人の姿が見えてくる。
具体的なアーキテクチャの紹介が興味深い

 最近の都市の過剰なセキュリティについての本。セキュリティの問題というのはここ最近のキーワードですし、この本も東浩紀の議論などをかなり下敷きにしているので、その手の本を読んできた人にとって目新しい面はないかもしれません。ただ、ホームレスを排除するための寝れない椅子、フェンス、さらに芸術(?)としてのオブジェなどの具体的なアーキテクチャを写真で紹介しているところなんかはとても興味深いですし、セキュリティの問題が大きく浮上する中での住宅や学校の具体的な建築思想を紹介した部分も面白いです。



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